うるしバカ物語 その7 余呉漆プロジェクト

日本一の漆バカを目指す男、渡邊嘉久です。

 

私が死ぬまでにしたいことの1つに余呉漆の復活がある。余呉漆とは長浜市の余呉で昔採取されていた漆のことだ。

余呉漆プロジェクトとは、余呉に現存する漆の木から漆の樹液を採取するとともに、その漆の木から分根などの方法で漆の木を増やし植栽しようとするものだ。

ちなみに、プロジェクトメンバーはうるしバカ一人だけだ(笑

 

余呉は現在は長浜市の一番北に位置し滋賀県と福井県との県境に接する。

今から50年以上前にその余呉で採取が行われていた。

そんな話を今から6年ほど前に私が岩手県の浄法寺に漆掻きの研修に行っていた時に知った。
30年ほど前に余呉の中之郷と言う所で漆の植林が行われたという資料があったのだ。
浄法寺から帰ってツテを頼りに中之郷の森林組合の関係者の方にお会いした。
漆の木を植林した事を覚えておられ、30年ほど前に漆の木を植林した場所に案内していただいた。

しかし残念ながらそこには漆の木は全くなかった。漆の木は人の手を加えてやらないと育たないそうだ。

 

その時に年配の人から、昔は余呉にもいろんなところに漆の木があってシーズンになると福井県から漆掻き職人が泊まり込みで来て漆の樹液の採取をしていたことを覚えている、という話を聞いた。

 

植物の専門の先生に同行していただいて漆の木を探しに行き、何本か漆の木が残っていることも確認した。

その際に.河原で熊の足跡らしきものを発見。

余呉は熊がよく出没する地域でもある。

いろいろな人に余呉漆のことを尋ね、現在は開発計画が中止となった丹生ダムの水没予定地域に昔から多くの漆の木があったことも分かった。

現在は道路が閉鎖されているので立ち入ることができないが、機会があればダム水没予定地域だった場所の漆の木の調査もしてみたい。

 

このうるしプロジェクト、利益が見込めるものではない。

うるしの木を植えてから、樹液が採取できるようになるまでに10〜15年くらいの時間がかかる。

労力と費用ばかりがかかるようなプロジェクトだ。

それだけに実現困難なものかもしれないが、少しずつでも活動を進め、賛同していただける方を増やし余呉漆の復活を図りたいと考えている。

 

 

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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