漆は湿度が高いとよく乾く

漆は湿度が高いとよく乾きます。

正確には乾くというよりも固まるといったほうが正しいのですが。

漆の中の成分と空気中の水分が化学反応をおこして硬化するわけです。

漆は温度が20度〜25度くらい、湿度が70%〜80%くらいの条件の時によく硬化すると言われています。

先日までは、晴れた日が続いて湿度も下がり急に気温も上がったので、漆が乾きにくい状態が続きました。

漆を塗ったものは漆風呂とか漆室(ムロ)と呼ばれる、引戸のある木製の大きな棚の中に入れ、その中で漆を硬化させます。

湿度の低い日は漆ムロの中も湿度が低くなっているわけで、そういう時は噴霧器でムロの中を湿らせたり濡らした布をムロの中に吊るして湿度を高くします。

今の季節は気温も上がってきたので必要ありませんが、冬場はムロの中の温度を上げる為にヒーターを入れることもあります。

漆そのものにも乾きの速い漆や遅い漆など性質が違うものがあるので、空気が乾燥している時には、比較的速く乾く漆を調合したりもします。

今日は久しぶりの雨。

先日まで乾燥した空気とは打って変わって湿り気の多い空気に変わりました。

一気にに漆の乾きが早くなります。

漆が速く乾きすぎると表面が縮んでしまったり、漆を塗った際の刷毛目が残ったまま乾いてしまうことがあります。

急に湿度が上がった時は要注意です。

特にもうすぐ始まるであろう梅雨時は漆塗りには厄介な時期でもあります。

梅雨時には、乾きの遅い漆を調合したり、漆ムロのある部屋のエアコンの除湿を効かせて湿度の低い状態を保つようにします。

今でこそ、エアコンで空調をある程度は管理できますが、エアコンのなかった昔はもっと大変だっただろうと思います。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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