漆塗りの弁当箱で食べるご飯は美味い

 弁当の語源には諸説あると言われていますが、有力な説が二つあります。
 

 一つが、中国南宋時代の俗語で「好都合」「便利なこと」を意味する「便当」が語源で、その後日本に伝わり「便道」「弁道」などの漢字があてられた。やがて「弁えて(そなえて)用に当てる」という意味から「弁当」の文字が当てられたという説。


 もう一つが、戦国時代に大勢に一度に食事を与える際、簡単な器に盛って配膳したことから「配当を弁ずる」または「当座を弁ずる」が語源であるとする説。

 「べんとう」の呼び名は安土桃山時代つまり織田信長や豊臣秀吉の時代に成立したとも言われています。
弁当箱という形態が生まれたのも安土桃山時代と言われている。それまでは笹や竹の皮に携帯食を包んでいたものが、安土桃山時代になって、漆器など箱型の入れ物に食事を入れて、花見や茶会などの場で食べられるようになった。
 

 弁当の歴史はさておき、実は私、仕事をしている日は弁当を持参して食べています。自作の漆塗りの弁当箱に自分で弁当を詰めて仕事場に持ってくるわけです。ご飯と簡単なおかずの粗食弁当です(笑)前夜の残りものか、少しだけ弁当用のおかずを作ってもらって、それを自分で詰めています。食べ盛りはとっくの昔に過ぎているので、体重を増やさないためにも粗食弁当で充分なのです。


 不思議なことに粗食弁当でも、弁当を食べると幸せな気持ちになれるのです。これは、漆塗りの弁当箱で食べているからかもしれません。


 それともう一つ不思議なことが、漆塗りの弁当箱で食べるご飯が美味しいのです。
白木の塗装されていない曲げわっぱの弁当箱は、ご飯の余分な水分を弁当箱が吸い取ってくれるから、ご飯が美味しいと言われています。漆が塗ってあると水分が吸い取られるということもないのに、漆塗りの弁当箱で食べるご飯は美味しいのです。プラスチックやアルミの弁当箱の場合は、蓋にも水滴がけっこう付いて、ご飯もべちゃとした感じになりますが、漆塗りの弁当箱ではそれがない。


 冬の寒い日に、ご飯が冷たくなっていても、漆塗りの弁当箱で食べる冷たいご飯は美味しいのです。
そんなこんなで漆塗りの弁当箱おすすめです。


 無塗装の白木の弁当箱は、もっと美味しくご飯を食べられるかもしれませんが、すぐカビが生えるのでお手入れが大変。


 白木に見えるけど透明塗料の塗ってあるのは、使っているうちに塗料が剥げてくるので、剥げた塗料を一緒に食べてしまうのではないかと思うと、ちょっと心配。
やっぱり弁当箱は漆塗りがいちばん。

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 ただし、漆塗りにもいろいろあって、しっかりと漆が塗りこんであるものがおすすめです。
拭き漆という技法で作られた物も、漆塗りは漆塗りなのですが、拭き漆は塗膜が非常に薄いのです。使って洗っているうちに、拭き漆の塗膜が摩耗してすぐに木地が出てきてしまいます。
弁当箱に限らずお椀なども、拭き漆仕上げの物は漆塗膜がすり減るのが早いので、使ったあと毎回洗うような食器には拭き漆はおすすめではありません。

 木目を見せたいとか、木の質感を残したいという木工作家さんなんかは、拭き漆仕上げにされることが多いようですが、漆のことをよくわかっている漆の作家や職人は食器は拭き漆仕上げにしないことのほうが多いです。

 だらだらと書いてしまいましたが、漆塗りの弁当箱おすすめです。
毎日の粗食弁当と味噌汁をインスタにあげてますので、ぜひ観てみてください。
漆塗りの弁当箱、渡辺久七商店で売ってます。この私が丹精込めて作ってます。

https://www.instagram.com/nagahama.jo_kiwan/

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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