式年遷宮と技術の伝承
日本一のうるしバカを目指す男、うるしエバンジェリストの渡邊嘉久です。
先日、伊勢神宮に参拝した際に、式年遷宮と技術の伝承ということで感じたことをブログに書いてみたいと思います。
伊勢神宮では平成25年に第62回式年遷宮が行われました。
式年というのは定められた年という意味で、伊勢神宮の場合20年ということになっています。
ちなみに下鴨神社では21年ごとに式年遷宮が行われています。
伊勢神宮の式年遷宮では社殿の造替が有名ですが、御装束神宝といわれる紡績具、紡織具、武器、武具、馬具、楽器、文具、日常具なども調整されます。
御装束神宝の調整には漆工、木工、金工、染織等の伝統的な工芸技術が多く使われます。
先の式年遷宮の際にも、日本でもトップレベルの工芸家の方々が御装束神宝の調整に携わられたそうです。
社殿の造替についても御装束神宝の調整についても、技術の伝承ということを考えた場合、20年というサイクルは実に絶妙のサイクルだと思います。
10代20代でのまだキャリアの浅い職人は下働きとして携わり、30代40代の働き盛りが
製作の第一線で腕をふるう。50代60代のベテランが製作の指揮監督を行う。
運のいい人は一生の間に3回にわたって式年遷宮の仕事に携わることができる。
1回目に携わる時には技術を学ぶ立場として、2回目は技術を実践する立場として、3回目は技術を伝える立場として、されぞれの役割に応じた技術の伝承がなされていく。
式年遷宮の仕事に携わったという誇りが、より高い技術習得への意欲とより高いレベルの作品製作への意欲を高めることになるでしょう。
20年に一度、工芸技術の粋を集めた新しいものを作ることが技術の伝承につながっています。
工芸技術を伝承していくには、高い技術レベルが要求されるものを作る機会が必要です。
工芸に携わる若い人にもそういう機会が増えればいいのですが、そのような仕事をする機会は減る一方です。
ちなみに、神様ごとの仕事に携わった場合、その実績を人に吹聴したりすることは慎んだ方がいいようです。ましてや実績を営業ツールに利用するなどは固く慎んだ方がいいようです。
私も先代からも言い伝えられていますので、山車の仕事のことなどもその点には気をつけるようにしよう。