うるしバカ物語 その6 常喜ブランドの漆器開発を目指して

日本一のうるしバカを目指す男、渡邊嘉久です。
昔からあった常喜椀をコピーした復刻常喜椀は制作発表することができた。
しかし、復刻常喜椀は昔ながらの形であることからもっと現代の生活にマッチしたデザインの漆器の開発をしたいと言う思いが強くなってきた。
ちょうどその頃、「しが新事業応援ファンド」という補助金のことを知った。
この「しが新事業応援ファンド」は、地域資源を活用した新たな商品やサービスの開発に対して補助金が支給されるものだ。
説明会に参加したり個別に相談に行ったりして、このファンドにエントリーすることにした。
私が携わっている浜仏壇は、県が指定する地域産業資源に含まれているので、それを利用し『地域資源浜仏壇の漆塗り技術を活用した漆器開発事業』というテーマでファンドに応募することにした。
一次審査(書類審査)、二次審査(プレゼン)があり、その審査をへて採否が決定される。
いままでそのような補助金の申請をしたこともなく、書類を書くのも四苦八苦。
人前で話すのが苦手ゆえに職人の道を選んだようなところもあるので、プレゼンなどは大の苦手。
なんとか二つの審査をクリアして、応募した事業計画が採択された。平成26年3月のことだった。
平成26年4月から平成27年3月までがファンドの事業期間だ。
デザイン性と耐久性に優れた漆器の開発をテーマに新たな漆器の開発に着手した。
県内の若手デザイナーにデザインを依頼。
いくつものサンプルの漆器を準備して、あーでもないこーでもないと言いながら漆器のデザインを検討する。
出来上がった図面をもとに椀木地師に木地を挽いてもらう。
出来上がった木地の持った感じや口当たりなどを検討し木地に微調整を加えてもらう。
シャープな感じのものと丸みを帯びた柔らかな感じのもの、二つのシリーズでそれぞれ5アイテムずつ、全部で10種類の漆器を開発することに。
漆の塗り方や色なども検討。
漆の塗り方は復刻常喜椀と同じように漆を塗り重ねることに。
砥の粉や地の粉といった下地材を用いずに漆のみを何度も塗り重ねるほうが耐久性が高いと判断したからだ。
平成27年3月には2シリーズ10アイテムの試作品の漆器が完成。
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現在、モニター利用などで使い勝手と耐久性を検証中だ。
イタリア料理の食事会で漆器を利用してもらったりもした。
漆器にパスタを盛ったり、デザートのアイスクリームを盛って利用してもらったところ、なかなかの評判だった。
これからの課題は、いかにしてこの常喜ブランドの漆器の良さを伝えていくかだ。
喜びのある食卓、喜びのある生活。
常喜ブランドの漆器を使っていただくことにより、心豊かに喜びのある生活を実現していただきたいという思いでこれからも漆を塗り続けようと思う。
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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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