漆の仕事の後継者問題

後継者をどうするのか?

息子が2人いるんならどっちかが仕事継ぐんでしょ⁈

といわれることがあるが、絶対に継がせません!と答える。

長浜の漆の文化を絶やさないために長浜漆プロジェクトに取り組んでいると言いながら無責任なことを言っているようで自分でも矛盾を感じることがありますが、親心とご理解いただきたいのです。

僕は漆塗りの仕事をしています。

仏壇屋の看板をあげながら、仏壇の漆塗りを中心にいろんなものに漆を塗ってます。

父親の代から長浜の曳山の修復を請け負っていたこともあり、最近では県外からも山車の漆塗りの修復を依頼されることも増えてきました。

常喜椀という昔から長浜で作られていた漆器の復刻にも取り組んでいます。

事業の柱であった仏壇のほうはどうかというと、衰退の一途をたどっているとしか言いようがありません。

全国的な傾向ですが、漆が塗ってあって金箔が貼られているような大きな仏壇はほとんど売れなくなってしまったのです。

現在は、仏壇の仕事と山車修復の仕事でどうにか売上を確保して生活していますが、生活していくのにギリギリの状態。

同じことをしていても今後売上が増加する見込みはなし。

仏壇は木地や金具、漆塗りなどいくつかの分野の職人の仕事によって成り立っているが、どの分野も若手の職人がいない。

近い将来、地域の職人だけで仏壇を作ることができなくなるだろう。

仕事があっても、今までのようなシステムで仕事をこなしていくことができなくなることが予想される。

仏壇の分野だけでなく漆の仕事全般に産業として仕事が成り立つことが困難な状況になりつつあります。

こんな状態で自分の子供を含めて若い人にこの仕事を勧めるわけにはいかないのです。

しかし産業として成り立たなくても、漆の仕事がなくなることはないでしょう。

作家的なものづくりと文化財などの修復などの分野で漆の仕事は残っていくと思います。

ただ家業だからなんとなく漆の仕事を継いでみようかなといった甘い気持ちでこの道に入っても、大変な目にあうことは容易に予想されます。

どんな人なら漆の仕事に就いてもやっていけるのか?

物作りが好きで、漆の仕事が好きで、少々収入が少なくても我慢できる。手先が器用で、木地作りから漆塗りまでマルチにこなせる技術が必要になってくるのではないかと思います。

問屋から、一部の分野のみ依頼されるような従来の職人的な仕事しか出来ないようではこれからの時代は厳しくなる。

ものづくりの技術はもちろんのこと、デザインセンスやマーケティングセンスも持ち合わせた人なら、これからの漆の仕事の世界でも生き残っていけるのではないかと思います。

いま漆の仕事に携わっている我々は何をすべきか?

自分の子供に自分の仕事を継がせる気はなくても、漆の仕事を将来に繋げていくためにも、若い人たちに興味を持ってもらえるような活動をしていくことなんでしょうね。

そして何より大事なことが、魅力的な人柄になること。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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