漆かぶれ

彷徨える漆職人の渡邊嘉久です。

漆塗りの仕事をしていると言うと、漆にかぶれないのか?とよく聞かれます。

漆の仕事をしている僕でも漆にはかぶれます。

指先や手のひらなど皮膚が比較的強いところは漆がついてもかぶれることはありませんが、腕や太ももの内側などに漆がつくとかぶれることがあります。

かぶれるといっても、漆がついた部分が赤くなる程度で、体調によっては少し痒みを感じることもあります。

30年近く漆の仕事をしていても全くかぶれないという事はありません。
代々漆の仕事をしている家に生まれたからなのか、ひどい漆かぶれになった事はありません。

子供の頃から漆が身近にありながらかぶれたことがなかったことを考えると、漆かぶれの免疫というのか耐性というのかそういうものが遺伝したのかなと思います。
以前、岩手県に漆掻きの研修に行った時も、この道50年60年という熟練漆掻きの職人さんでも少しはかぶれていました。
かぶれやすい漆や時期的な問題もありますが、誰もが漆にはかぶれるようです。

精製された漆より生漆の方がかぶれやすいようです。

生漆でも漆の木から採れたばかりの新鮮な漆の方がかぶれやすい気がします。
夏場は、肌の露出が多いからなのかかぶれる事が多いようです。

漆に免疫がない人の場合は、体の一部に少し漆がついただけで全身がかゆくなったり赤くはれたりする事があります。
まったく漆に縁のなかった人が漆の仕事を始めたりする時は、初めの頃は大変な目にあうようですね。
しかし、だんだんと漆に慣れてくるとかぶれにくくなってきます。

過敏な人は、直接漆が皮膚についたりする事がなくても、漆塗りの仕事をしている側に近づいたり、表面的には乾いてるように見えても漆を塗ってからあまり時間の経っていない漆器などを使用するだけで漆にかぶれる事があるようです。
新しく漆器を購入した場合、その漆器が作られてからどれくらいの時間が経っているかわかりませんが、漆の匂いが匂ってくるような場合は漆の匂いがしなくなるまで使用を控えるのが無難かもしれません。

漆かぶれは漆に含まれるウルシオールという成分がかぶれの原因になります
実はあの美味しいマンゴーも漆科の植物になり、マンゴーにもウルシオールが含まれているため、マンゴーでかぶれる人もあるようです。

漆にかぶれると言う事で、ちょっとイメージの悪い漆ですが、完全に硬化した漆はかぶれる心配はありません。
心配せずにどんどん漆器を使ってくださいね。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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