山車の平成の大修理完了

日本一の漆バカを目指す男、うるしエバンジェリストの渡邊嘉久です。

 

2年がかりで取り組んできた、祭りに使われる山車の修復作業が終わり、今日納品してきました。

レンタカーで2tロングサイズのトラックを借りてきたのですが、全て積み込むことができず、高速道路を使って片道約1時間半のの距離を今日は2往復。

車の運転に疲れたのと、仕事を納品できた安堵感から全身の力が抜けたような状態になっています。

 

今回手がけた山車は、国の重要無形民族文化財に指定されている祭に使われるものでした。

国の重要無形民俗文化財に指定されている山車祭は、全国に33件あります。もうすぐ、滋賀県の大津祭が指定されるようです。

ちなみに現在指定されている33件の祭は、ユネスコの無形文化遺産登録を目指しています。

 

重要無形民族文化財に指定されている祭の山車を修復する際には国からの補助金があります。

国の補助金があるということは、そのぶん制約も多く、所有者の方と修理業者が勝手に修理方針を決めて修理するわけにはいきません。

学識経験者の先生方のご指導を受けながら修理を進めるわけです。

もちろん、文化庁始め地方公共団体の教育委員会のご指導もあります。

 

全国の山車祭のそれぞれの山車を所有される町内の方々は祭に対して強い情熱を持っておられる方が多く、山車の大修理となるとそれぞれの熱い思いを持っておられます。

時に、学識経験の先生方と所有者であるご町内のご意見が合わないこともあります。

文化財的な価値を損なうわけにはいかないという意見を持たれる学識の先生方、おらが町の山車を綺麗によりよくしたいという意見のご町内の方々。

時に侃々諤々の意見が交わされることもあり、修理業者はその中で翻弄されることもあるのです。

ご町内の中でも、修理方針に対していろいろな意見をお持ちの方がおられます。

 

そのような状況のなか、祭の山車の修理に携われることは大きな誇りであるとともに、大きな責任とプレッシャーを感じます。

限られた予算、限られた時間の中で、いかに修理方針に沿って最善の修理ができるか。

古いものを修理するときは、どのような素材・技術で作られたものなのか、どの程度まで直したらいいのか、ときに先生方やご町内の方に相談したり提案したり。

自分の思いで、自分のやり方で進める仕事とは違って大変な面も多いのですが、それだけやりがいを感じる仕事でもあります。

 

これから宮大工の手によって組み立てられ、4月の祭に曳き廻されます。

平成の大修理によって修復された山車が、町の活力に役立ったらと願うばかりです。

 

組み立てられたらどのような姿になるのか、ちょっとドキドキもしています。

犬山祭

 

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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