『星と祭』読了

「星と祭」読了
井上靖の「星と祭」を読んだ。
昨年の秋に「星と祭復刊プロジェクト」というニュースにふれたのがきっかけだった。
井上靖という作家の名前は知っていた。
井上靖が滋賀の北部の湖北を何度も訪れ観音さんをテーマにした小説を書いたことも知っていた。
しかし、井上靖の湖北の観音さんをテーマにしたその小説を読んだこともなかったし、その小説の題名すら知らなかった。

「星と祭復刊プロジェクト」のニュースにふれたときも、井上靖や星と祭という本に関心があったわけではなく、ただ長浜の人たちがやっていることに興味を持っただけだった。
「星と祭」をグーグルで検索しamazonのサイトを開いた。
復刊プロジェクトが立ち上がるくらいだから、新刊はamazonでも販売されていない。
しかしそのとき kindle unlimited ¥0の文字が目にはいった。
僕は完全に元は取れていない kindle unlimited の会員だったのだ。

ただなら読んでみようかということで、「星と祭」の上巻をダウンロードしたのが2018年の9月のことだった。
9月にダウンロードしたのはいいものの、読むこともなく2019年になっていた。
何を思ったのか2019年の1月のある日、スマホで「星と祭」を読みだした。

読みやすい文体と情景が浮かんでくるような描写のおかげで飽きることなくスマホの中の活字を読むことができた。
ほどなくして、琵琶湖や長浜が小説に登場してくる。
身近なところが登場してくると俄然興味がわき時間を忘れて小説を読み進めた。
子供を不慮の事故で失った親の心境にも感ずるところがあった。

物語が進んでくると、湖北の観音さんが登場してくる。
渡岸寺の十一面観音は拝観したことはあるが、それ以外の湖北の観音さんを拝観したことはない。

この小説を読んでいると湖北の観音さんを拝観したくなってくる。
若いときにこの小説を読んでも観音さんに興味を持つことはなかったかもしれない。

しかし、50代も半ばを過ぎた現在の僕にとってこの小説は観音さんへの興味をそそるに十分な小説だった。

いつでも拝観できる観音さんばかりではないが、いつでも行ける場所にある湖北の観音さん。
「星と祭」という小説は観音さんを拝観したいと思わせてくれる小説だった。
「星と祭」が復刊されたら、今度は紙の本でもう一度ゆっくりと読み直してみたいと思う。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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