伝統工芸の後継者について思うこと

日本一のうるしバカを目指す男、うるしエバンジェリストの渡邊嘉久です。

 

先日、滋賀県内の伝統工芸に関係する事業者の意見交換会というものがあり参加してきました。

意見交換会といっても、参加者20名弱が自己紹介を兼ねて一言ずつ発言するというものだ。

20名弱が発言しておよそ2時間。

その中で後継者の育成に関する発言をする人がいた。

後継者を育成するために何年間か賃金の補填をしてほしいとの趣旨の発言だった。

売上が減少し収益も少なくなっているので、賃金の補填を要望したい心情はよくわかるが、はたしてそれが後継者の育成につながるのか。

 

私も、伝統工芸という名の下で絶滅危惧種のような仕事をしているので、よく「後継者はいるんですか?」「後継者がいないのは問題ですよね」と言われることがある。

私には息子二人がいるが、その息子に今の事業を継がせる気は全く無い。

もし、息子が後を継ぎたいといっても大反対する。

なぜなら、事業の将来性がないからだ。

儲かる仕事で将来性のある仕事なら、後継者のなり手を探すのに苦労しないだろう。

 

補助金で何年間か賃金の補填をしてもらっても、何年か後に補助金が切れた時に仕事がなかったら何にもならない。

今現在、親方に弟子を取るだけの余裕がないのだから、補助金を使って弟子に仕事を覚えさせても、弟子が一人前になった時に仕事が増えているわけがない。

少なくとも、今までもこれからも同じ仕事を同じやり方でやっていこうとする人には仕事が増えるわけがない。

 

こんなことを書いているが、激変する世の中、今ある仕事のほとんどが10年後20年後どうなっているかわからない。

グーグルCEO「20年後、あなたが望もうが、望むまいが現在の仕事のほとんどが機械によって代行される。」

 

これからの時代、どんな仕事であっても必ずしも将来性があるとは言えない。

こんなことを考えると、伝統工芸と言われている仕事にも将来性があるかもしれない。

機械やコンピューターには真似のできない独自性を発揮できるか否か。

 

これからの時代、伝統工芸と言われている業界で生き残っていくにはデザインセンスとマーケティングセンスが必要だと思う。

 

昔ながらの決まった仕事をコツコツやっていたら黙っていても仕事が来る時代ではない。

しかし、デザインセンスとマーケティングセンスがあり新しいことにも果敢に挑戦できる人間にとって伝統工芸の世界は面白い世界かもしれない。

 

 

 

 

 

 

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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伝統工芸の後継者について思うこと” に対して2件のコメントがあります。

  1. 輪島の木地屋 より:

    同意見です。一所懸命が結果に繋がる時代が終わり、そこに付加価値が必要になって来ていますよね。次の一歩を見据えることなく補助を求めるのは先延ばしに過ぎないと思います。私の地元でもこのような要望がありがっかりすることがあります

    1. 渡邊 嘉久 より:

      輪島の生地屋さん、コメントありがとうございます。伝統工芸という名のもとに、特別扱いされて当然という考えが多少なりともあるように思います。世の中が激変していることを、伝統工芸に携わる人間ももっと認識する必要がありますよね。

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