あまのじゃく 番外編
あまのじゃく
昔、昔といっても30年くらい前の話だが、彦根にアマノジャクというダイビングショップがあった。
二十代の中頃、西表島での体験ダイビングでクマノミの姿に魅力された僕は、ダイビングのCカードを取るために彦根にあったアマノジャクというダイビングショップを訪れた。
西表島で体験ダイビングをしたのが9月頃だった。
地元に帰りダイビングの講習をやっているところを探したら彦根のアマノジャクにたどり着いた。
アマノジャクではダイビング講習の海洋実習は、ふつう越前海岸で行なっていた。
僕が講習を受けた時は時期が晩秋にさしかかっており、日本海側の越前では条件が悪すぎるということで和歌山県の串本で海洋実習を受けた。
アマノジャクの店主のKさんは僕より20歳くらい歳上だった。
一泊二日の串本での海洋実習には5名くらいの受講生が参加したと思う。
民宿で宿泊したが、その夜は当然のことながら酒盛りになった。
30年ほど前のことをはっきりと覚えているわけではないが、Kさんは無類の酒好きで、その晩も大酒を飲んだことは間違いない。
串本から帰った後も、Kさんとはよく酒を飲んだ。
最初の就職先の銀行を辞め家業を継いだものの、満たされない毎日を過ごしていた頃だった。
仕事には身が入らず、仕事以外のことに生きがいや楽しみを見出そうとしていた頃だった。
それから数年間は、ダイビングにもよく行ったしKさんともよく酒を飲んだ。
沖縄のダイビングショップに勤めながらダイビングインストラクターを目指そうと真剣に考えたこともあった。
しかし、思いきってそれを実現することはできなかった。
家業を一度辞めて別の会社に勤めた後、再び家業に従事するようになってからはダイビングからは遠ざかり、今に至っている。
ダイビングショップの店主のKさんとはよく気があっていたのだと思う。
理由は、二人とも天邪鬼だったから。
僕の天邪鬼な性格は、今もそのままだ。