長浜漆プロジェクトの経緯 その3

いよいよ漆掻きの研修の始まり

初日と2日目は
浄法寺漆生産組合の
組合長さんについてまわって
漆掻きの作業の見学が主だった

漆の木が
あちらこちらにあることに感動

正直言うと
それまで
漆掻きの様子を
生で見ることはなかった

大学や専門学校で
漆のことを勉強した人は
授業のカリキュラムの一環で
漆掻きの様子や
漆精製などを
見学したり
体験したりする機会もあるようだが

学校で勉強せずに
親方について
漆塗りの仕事を
始めた人間は
漆掻きを
実際に見たり
体験したりした人は
少ないと思う

漆掻きの職人さんは

一日中一箇所に止まって
漆掻きをするわけでなく
一箇所で何本か掻いたあとは
場所を移動して
また何本か掻く
というスタイルだった

途中で
他の漆掻きの職人さんと遭遇することもあったが
職人によって
キズのつけ方が違ったり
興味深かった

キズのつけ方だけではなく
漆樹液をヘラで掬う
タイミングや掬い方も
職人によって違い
それが漆の性質にも影響するらしい

漆塗りの仕事は20年ほどやっていても
漆のことは知らないことだらけ
ということを身にしみて感じた

3日目からは
長期研修生について回った

漆の木の周りの下草を刈ったり

漆掻きの道具を
ひと通り貸してもらって
実際に漆掻きを行ったりした

どの作業も新鮮で楽しかった

僕の面倒をみてくれた
長期研修生は
ひとまわりくらい年上の
京都で活動する木工家だった

個性的な人だったが
いい人で
いろんなことを教えてもらった

個性的な人
という表現をしたが
言い方を変えると
変わった人とも言える

ここだけの話だが
漆掻きに興味を持って
わざわざ岩手県まで行くような人は
ほとんど変わった人
と言っても過言はないだろう

そういう自分も
変わった人間であることは否定しない(笑)

長期研修生の人は
いろいろ面倒をみてくれた


浄法寺に滞在中の
ある夜に
漆掻きの職人でありながら
漆の苗木を生産している人のところに
連れて行ってくれた

漆の苗木を生産している人とは
雑談を交えながら
苗木の作り方や
漆の木の育て方なんかの
話を聞かせてもらった

雑談の中で
「どこから来たのか?」
ということを聞かれた
僕「滋賀県から来ました」
漆「滋賀県か、そういうと昔滋賀県に漆の苗木を送ったことがあるけど、どうなってるかな」
僕「えっ、滋賀県に漆の苗木を送られたんですか。ということは滋賀でも漆の植栽をしたってことですよね。いつ頃のことなんですか?」
漆「今から20年くらい前だったと思う」
僕「滋賀県のどこに送ったかわかりませんか?」
漆「伝票見たらわかると思う」
僕「お手数おかけしますが、伝票探してもらって、どこに送ったか調べてもらえませんか?」
漆「わかった、調べておくから、2日後くらいに来て」

そんな会話をして
その日は
漆の苗木の生産者さんのお宅を後にした

なんだかワクワクしてきたのを
今でも覚えている

続きは
その4に

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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