長浜漆プロジェクトの経緯 その6

1990年頃に
浄法寺から余呉に出荷された
漆の苗木は
植栽されたものの
うまく育たず
全て枯れてしまっていた

それは残念な話だが
新たな事実がわかった

昭和30年(1955)頃まで
長浜市余呉町には
漆の木が至るとこにあって
漆掻きが行われていたのだ

探せば漆の木があるに違いない

そんな思いを持って
余呉での漆の木探しが始まった

自分で勝手に
余呉漆復活プロジェクト
と名づけた

最初は
余呉町内のいろんなところを
自分ひとりで車に乗って探してみた

しかし
残念ながら
僕には
木を見て
漆の木と判断できるだけの
見識がなかった

浄法寺で漆掻きの研修をしているときは
他の木と見分けることができたが

滋賀に帰ってから
山に生えている木から
漆の木を見つけ出すことはできなかった

植物オンチの僕では無理だと判断し
地元の
植物の専門家として知られている先生に
連絡をとり
事情を説明した上で
その先生を車の助手席に乗せ
余呉の山間部を走り回った

植物の専門家の先生には
3回くらい同行していただいた

先生に同行していただいて
高時川上流部の
丹生ダム建設予定地だった場所の近くの川沿いで
数本の漆の木を見つけることができた

見つかった漆の木には
蔓性の植物が巻きついていて
樹勢はかなり弱っているようだった

後日
鎌を持っていって
漆の木に巻きついていた蔓を
取り去りにいった

2009年の晩秋だった

次にその場所を訪れたのは
次の年2010年の5月頃だったと思う

高時川沿いを中心に
漆の木を探したが
なかなか見つけられなかった

その頃
自分の仕事が忙しかったこともあり
漆の木を探しに行く時間が
なかなか取れなかった

漆の木探しが進捗しないまま
2年ちょっと経った頃
僕の体に癌が見つかった

手術で臓器がひとつなくなり
半年間ほど抗がん剤治療も経験した

それから2年くらい
余呉漆復活プロジェクトは
休止状態だった

浄法寺での
漆掻き研修からは
5年の月日が経過していた

その7に続く

The following two tabs change content below.
昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

最新記事 by 渡邊 嘉久 (全て見る)