職人が一人前になるのに何年かかる?

日本一の漆バカを目指す男、渡邊嘉久です。

職人が一人前になるのに何年かかるのか。

よく職人が1人前になるのに10年かかるとか言われることがあるが、それは本当だろうか。

1人前と言うレベルもいろいろあるが、プロとしてお客さんからお金をもらえるレベルの仕事ができるようになるという事を考えると、10年も絶対にかからないと思う。

ではなぜよく職人が1人前になるのに10年かかると言われるのだろうか。
僕が考えるにその理由は3つあると思う。

1つは親方が教え方がわからないということ。
何をどうやって教えたらいいかわからない。
教える時間ももったいないし、弟子がちんたらやってるくらいなら自分がやったほうが早い。ということで、職人っていうのは人の仕事を見て覚えるもんだの一言で片付けようとする。

2つ目には、弟子に仕事を教えて早く一人前にすると親方の仕事をとられてしまうのではないかという危機感を持っているということ。
弟子を雇ったからといって仕事が増えるわけではない。そんな中で仕事を教え、早く一人前にしてしまうと、独立して親方の仕事を持って行ってしまうのではないかと考えている。

三つ目は、自分の仕事を必要以上に美化しているということが考えられる。あまりにも早く一人前になれるような仕事は簡単な仕事だが、一人前になるのに十年かかるような仕事は高い技術が必要で難しい仕事だと決めつけて、自分の仕事も高い技術が必要で難しい仕事なんだと自惚れている。

どれだけの期間で一人前になれるかというのは人それぞれ違うと思う。
器用でやる気があれば数ヶ月もすれば1人前の仕事ができるようになることもある。

職人になるまでのキャリアや能力にもよるが、3年もあればある程度の仕事ができるようになると思う。

反対に、3年もやってそこそこの仕事ができないようであれば、その仕事はやめておいたほうが無難かもしれない。

ただ職人の仕事といっても奥が深くあれもこれもとなるとそう簡単にはいかない。

一人前と言っても一流もいれば二流も三流もある。
キャリアの長い職人が必ずしもいい仕事をするわけではない。

しかし、キャリアを積んだ一流の職人には仕事の勘やコツなど、仕事はできるがキャリアの浅い職人にはないものを持っていることは多い。

必要以上の下積みの修行は無駄なことも多いと思うが、しっかりとした親方のもとでのある程度の下積みは決して無駄にはならないと思う。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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