接着剤としての漆 蜂と漆の意外な関係
日本一の漆バカを目指す男、うるしエバンジェリストの渡邊嘉久です。
昨日のブログで金箔のことを書き、その中で漆を接着剤として金箔を押すということを書きましたが、漆は昔から接着剤としても使われてきました。
陶磁器の金継修理で割れた破片を接着する際にも漆が使われます。
その際には、麦漆といわれる小麦粉と漆を混ぜたものを用います。
麦漆の作り方は、まず小麦粉に水を少量加えよく練り合わせたところに生漆をまぜる。生漆を加え練り合わせていくと粘性が高まっていきます。
麦漆は、木工品の接着などにも使われている。
麦漆は、固まってしまうとひじょうに強い接着力があるが、固まるまでに時間がかかるのがちょっと難点です。
陶磁器の接着などで、密着した状態では数ヶ月たっても固まりません。
合成系の接着剤は100年ほどの歴史しかないので、歴史が証明している接着剤では麦漆が一番強いのではないかと思います。
麦漆と同じようなものに糊漆というものもあります。
糊漆は米粉から作った糊に生漆を混ぜ合わせたもので、布や紙を貼ったりするときに使います。
状況に応じて、糊の水分量を調整したり、糊漆と麦漆と混合して粘度の調整をすることもあります。
漆工芸の装飾の代表でもある蒔絵も漆を接着剤として金粉を蒔き付けます。
漆の接着力を最初に発見したのは誰か?
この漆の力を最初に発見したのは、人間ではなく蜂だったといわれています。
漆が硬く固まる力を、蜂は蜂の巣作りに利用しているのです。
蜂の巣をよく見てみると、付け根に黒い塊があるそうです。
その黒い塊が漆らしいのです。
蜂がどのように蜂の巣を作るのかに興味をもった人間が、巣作りをする蜂を追いかけてみたところ、蜂が漆の木から樹液をとっているのを発見。
蜂が巣に帰り、巣と木の接合面にとってきた樹液をつけているところを見たといわれています。
以来、狩猟に使う矢じりの接着剤として使い始めたのが、人間と漆の最初の出会いとなったといわれています。