漆がよく乾く

この季節、漆がよく乾きます。

漆は、空気中の水分と反応して乾きます。

乾くというより硬化するという表現の方が当てはまるのですが、湿度の高い梅雨の時期は漆がよく乾くんです。

 

漆が乾くというのは、成分の酵素(ラッカーゼ)が、水分の中の酸素を取り込んで反応し、
ウルシオールが液体から固体になっていくことです。
漆が乾くには、温度が25~30℃、湿度が70%程度が最も良いとされています。
梅雨のこの時期が、漆が一番よく乾きます。

 

漆がよく乾くのはいいんですけど、乾きすぎて失敗することも多いのがこの時期。

漆が乾くときに、表面と内部の乾くスピードが大きく違うと表面が縮んでしまうことがあります。

塗膜が縮んでしまったら最期、縮んだ塗膜とめくりとって塗り直すしかありません。

縮まないようにするには、厚塗りをしないようにしたり、乾きの遅い漆を使ったりします。

厚塗りをしないようにするといっても、塗膜が薄すぎると綺麗な塗面ができないので、ほどほどの厚さに塗る必要があり、そこで失敗してしまうことがあります。

そこが職人の腕の見せ所かもしれませんが・・・・・。

急いでいるものに限って失敗してしまう、うるしバカです。

 

拭き漆をするときも、漆が早く乾きすぎて困ることがあります。

拭き漆というのは、木地に生漆を塗った後、ウェスなどで生漆を拭き取るのですが、漆が早く乾くと拭き取る際に漆がコテコテになってしまい、うまく拭き取れなくなってしまいます。

そのときは、溶剤で漆を拭き取ってしまい、もう一回やり直し。

 

漆がよく乾くのはいいけれど、神経も使う梅雨時です。

 

日本一の漆バカを目指す男、渡邊嘉久でした。

 

 

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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