木地作りも始めたことで創作の幅が広がってきた

ここ最近ブログを再開しているが、2年ほどブログはほとんど書かずにいた。

その間、何もしていなかったわけではない。
むしろ、自分の中では大きな変化の期間だったように思う。

昨年の大きな変化の一つが、木工旋盤を導入したことだ。

これまでは木地師さんに木地をお願いしてきたが、木地師さんも忙しいらしく、注文したものをすぐに作ってもらえないことが増えてきた。もちろんそれは喜ばしいことでもあるのだが、制作のタイミングを自分でコントロールできないもどかしさもあった。

それに以前から、いつか自分の手で形づくりの段階からやってみたいという思いがずっとあった。

そんな気持ちが重なって、思い切って木工旋盤を導入した。

最初は当然うまくいかない。
木は漆とはまたまったく違う難しさがある。刃物の当て方ひとつで形が変わり、少し油断すると削りすぎてしまったり、木地に大きな傷を入れてしまう。

さすがに、お椀のような物をいきなり作るのはまだ難しい。
そこまでの精度には、熟練が必要だと思う。

ただ、たまごのようなシンプルなフォルムなら、なんとか形にできるようになってきた。
なんとか形にはできるようにはなってきたが、理想の形にはほど遠い。

この「自分で木を削って形を生み出す」という工程が加わったことで、創作の幅は一気に広がった。

年末には、デパートでのポップアップ出展に向けて、試しに木製漆塗りの鏡餅を作ってみた。
これが思っていた以上に好評で、自分でも少し驚いた。

木地から自分で作れるようになったことで、季節ものや思いついたアイデアをすぐ形にできる。これは今までにはなかった大きな強みだ。

さらに最近は、木軸のボールペンも試作している。
2月に出展した東京ギフトショー LIFE×DESIGNでは、いろんな方との会話の中でボールペンが何度か話題になった。

一部では、木軸ボールペンがちょっとした人気になっているらしい。
銘木と呼ばれる希少な木材や、個性的な木目を活かしたものが好まれていて、多くは無塗装だったりオイル仕上げだったりするようだ。

しかし、僕が木軸ボールペンを作るなら、漆を塗らないという選択肢はない。

実際に漆を塗ってみると、手に伝わる感触はどこかnaderuに通じる触感があった。
木のぬくもりの上に、漆ならではのしっとりとした深みが重なる。

作っているうちに、この木軸漆塗りボールペンは、naderuの弟分のような存在に思えてきた。

単なる筆記具ではない。
もしかするとこれは、書く前に心を整えるための道具なのかもしれない。

ペンを手に取り、その質感を感じ、少し気持ちを落ち着けてから言葉を書く。
そんな小さな所作が、慌ただしい日常の中に静かな時間を生み出してくれる気がしている。

ブログを休んでいた期間、表には見えていなかったかもしれないが、水面下ではこんなふうに新しい挑戦を続けていた。

木を削り、漆を塗り、磨き上げる。
形づくりから仕上げまで一貫してできるようになったことで、これから生み出せるものはもっと増えていきそうだ。

休んでいたように見えた期間は、
実は次の物語のための、とても大事な助走期間だったのかもしれない。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。