拭き漆という漆塗りの技法

 漆塗りといっても、使う漆や漆の塗り方によってさまざまな漆塗りがあります。

その中に拭き漆(ふきうるし)という技法があります。

文字通り塗った漆を拭き取るから拭き漆なんですね。

漆は大きく分けると生漆(きうるし)と精製漆に分けることができますが、拭き漆には基本的に生漆を用います。

木地に生漆を塗り、塗った漆をウェスや紙を使って拭き取ります。

漆室に入れて乾かした後、必要に応じて拭き漆を繰り返します。

場合によっては20回程度繰り返すこともありますが、2回のものと20回のものでは塗膜の感じは大きく違います。

何度も繰り返すことで、表面に薄い漆の塗膜が形成されます。

それによって木地の表面に光沢がでて、木目の美しさをより強調した作品が出来上がります。

この写真はケヤキの板に拭き漆を施したものです。

導管の部分が黒っぽくなって木目が強調されます。

拭き漆の場合、木目の美しさを生かせるので、木目の美しさを生かしたい家具やお盆などによく用いられます。

 

拭き漆を何度も繰り返しても、精製漆を普通に塗ったものに比べると塗膜は薄く、食器など頻繁に洗うものは漆が早く磨り減ってしまいます。

漆がすり減って木地が見えてきても、またその上に拭き漆をすると甦らすことはできます。

ただ、漆がすり減って木地が見えた状態で長い間使い続けると、木地に塩分や油分が染み込んで、その上に拭き漆をしても漆が乾かないということがあるので注意が必要ですね。

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昭和38年(1963年)滋賀県長浜市生まれ。 漆塗職人をやってます。お箸お椀から建造物の漆塗りまでオールラウンドにこなします。日本一の漆バカを目指し、日本初のうるしエバンジェリストとして漆の魅力を広く伝えていきます。

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